Handmade Project タイトル

★☆第4回【60年代サウンド、ゲルマニュームFUZZ】の製作☆★

 WOWOWの前宣伝に乗せられて、この正月「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」なるアニメを見てしまった。録画までして3回も見た(ヒマだね)。幸いなことに、私はテレビ放映ヴァージョンを一度も見ていないので、まったく白紙、予備知識も先入観もなしで見られた。(「見ることができた」なんてNHK風には絶対に書かないのだ。日本語の破壊に与したくない)
 さてはて、この映画は何であろうか? 映画や小説に、いわゆる「ストーリー」など不要なことは、その昔「キャッチ22」(早川文庫、必読!)やリチャード・ブローティガンの小説(ほとんど晶文社)を読んで納得していたし、混沌の中で生きている(ウゴウゴ人生やっている)人間が書いて(作って)いる以上、むしろ一貫性のあるストーリーなど「ウソ」ともいえる。作者が生きている限り「結末」も無くたって構わない。その意味でエヴァンゲリオンは映画として立派に成立していると思う。もっとも、死んでからは小説もアニメも作れないが。そう、全力投球した作品に「結末」はあり得ない。
 といって、全面的に支持できるわけでもない。まずアニメが汚い。いかに制作費削減とはいえ、もう少しセル画を増やせよ。このご時世でフルアニメなど望まないけれど、動きの汚さは「日本アニメーション」並み。でもキャラクターはまずまず。特にアスカという少女の性格付けと表情・ポーズには惚れた。ま、これには個人的な思い入れもあって、アスカそっくりの女性に20年間恋し続けているのだから仕方ない。
 ストーリーというか状況というかは非常に象徴的。映画を見て「だから国連など信じられんのだ」なんてヤボは言わない。今、少なくとも日本で生きている人間に共通する不安定感、アイデンティティの喪失感、その他モロモロは、いくらでも深読みできる。観客に深読みさせるのは制作者のテクニックか、あるいは本音からか、どっちだろう? いずれにしても、いわゆるアニメヲタクが注目する素地がそこにある。ただ、言わせてもらえば、深読みの面では押井守氏の「天使のたまご」の方が私は好きだが。
 決定的にズルいと感じたのは、エヴァンゲリオンで暗示的に提示されている多くの「命題」に、新しいものはひとつもないこと。ここはアニメのページではないのでいちいち採り上げないが、命題のすべては既存の小説・映画・宗教からの借り物である。ひとつだけ挙げれば「私にとって生と死は同じ価値だ」という、若い人が聞いたら多少ショックかもしれない言葉は、ずーっと昔、インドでお釈迦様が(本来の意味で)言っている(輪廻転生するからではない。字義通りの意味)。つまり、古今東西の解決不能な命題の中から、映画のシチュエーションに合ったものを、チラチラ見え隠れさせているところがズルい。作者はよく勉強しているようだけれど、「自前の」命題は見えてこない。なこと言うと「映画自体が命題です」と居直られそうだが。
 でもまあ、たとえ借り物であっても問題を提起することは良いことだ。モノを考えず、消化器官と生殖器だけみたいなアホが増えている現状に、多少の波風は立てられるかもしれない。それに古代ローマでも既に言われているではないか! 「日の下に新しきものは無し」と。
 そして今回作るのは「日の下に〜」の格言通りのビンテージ・マシン。1.5Vで動作するゲルマニューム・トランジスタを3石使ったファズ。新作ではなく、一度GMで発表し、Handmade Project ver.2にも収録されているマシン。インターネットなので著作権(商標権?)の関係で書けないが、某有名メーカーのオールドモデルのコピー、一部改良版だ。ジミヘンが有名になる前、ファズ・フェイス以前に使っていた、といえば、わかるヒトにはわかるだろう。三度目の製作記事になるが、私の好きなファズ、ベスト・スリーに入るマシンなので許しておくれ。ゲルマ石の柔らかいトーンがたまらない。それに簡単に作れるから多くの人にコピーしてもらえるんじゃないかと期待している。

■GE FUZZ■
GE FUZZ 写真
 「GE」とは「Ge」のこと。つまりゲルマニューム。なにやらゲルマニューム鉱石に囲まれていると健康促進の効果があるそうで、昔、某ミュージシャンが凝っていた。真偽のほどは定かではない。しかし私たち変態音屋にとって、ゲルマは有り難いもののひとつで真偽は疑う余地もない。ゲルマ石のマシンには独特の味がある。誤解を恐れずに言うなら、IC(すべてシリコン)よりも真空管に近い感覚。「どうして?」なんて難しいことは訊かないで。とにかくそうなのだ。
 簡単な話、最初の回に作った「D−FUZ」のクリッパ・ダイオード2本を1S1588からSD34、OA90などのゲルマ・ダイオードに変えてみるといい(ダイオード自体は1本20円程度で安い)。それだけでもサウンドは柔らかくなる……この程度の改造は読者諸氏にやってもらうとして、今回はゲルマニューム極端の極致、ファズの原型とも思われるマシンをリメイクする(リニューアルなんていう広告代理店御用達のゴマカシ言葉は使わない)。
 1961年といえば、そう30年近く昔になる。東京オリンピックや新幹線登場の3年前に世界最初のエフェクタが使われた。リッチー・ブラックモアの師匠のジム・サリバンという人が「音を歪ませる機械」を使った、と記録にある。まあ、それ以前にもアンプのスピーカを破いて、わざとヘンな音にするなどの試みはあったようだが(ヘンな人はいつの世にもいる。日の下に新しきものはなし)、いわゆるエフェクタとしては、これが最初のようだ。不幸にして詳細は知らないが、多分ゲルマニューム・トランジスタの回路であったろう。当時はまだ真空管も健在で(ST管さえ!)現役パーツだったから、あるいはタマかもしれないけど。回路を知っている人、教えてください。作って発表します!
 その2〜3年後の1963〜4年、某有名エフェクタメーカーと楽器メーカーが、両社のブランドを付けてファズを市販した。それがこの「GE FUZZ」のオリジナル。メーカー名はGM誌とH.M.ver.2では詳しく書けたが、ここでは書けない。誰かにチクられて米国の弁護士からメイルなどもらいたくないから。ごめんね。でも心配性の人にお知らせすると、一般に「電子回路」の回路自体には著作権はない。メーカー名や機種名を出さない限りセーフ。それに今回は2ヶ所ばかり定数を変えてある。もっとセーフ!(オリジナルの定数は後述)
 つまりこのファズは、史上最初のメーカー製量産マシンの可能性が大なのだ。回路構成といい、電源といい、とにかく歴史的。当時はコレしか無かったのかもしれないが、前記のようにファズ・フェイスを愛用する前のジミヘンも使っていた(証拠写真あり)。サウンドから推測するとストーンズの初期もコレのような気がする。サティスファクションのイントロの音も簡単に出せるから。
 30年前のマシンを、まったくそのままの形で復元するのは不可能。何故って、当時と今とではパーツ自体が違う。コンデンサも違うし、なにより石が違う。同じゲルマでもオリジナル機の石は、とっくにディスコン(製造中止)になっているだろう。そこで、そういった解決不能の諸点はシカトして、出来る限りオリジナルに近く作ってみた。結果はもちろんOK。60年代サウンドが浮かび上がる。サイケ以前の音だ。現在の洗練されたマシンに比べると少々ノイズが多いのは致し方ないが(実用上の問題は、まず無い)、そういった欠点も「音」の質で充分以上にカバーされてしまう。
 使い方はきわめて簡単。ファズ・フェイスのように特別なテクニックが必要ってことはない。誰でも「その人の腕なりに」使える。製作自体、これも簡単(GMでの製作時よりも作りやすい構造にした)。初心者諸君にもチャレンジしてもらえるだろう。いや、ぜひチャレンジしてほしい。これが60年代サウンドだ!

■ゲルマとシリコン■

 音質を言葉で表わすのは難しい。ゲルマとシリコン、どう違うか?といえば、昔風の人になら三極管がゲルマで五極管がシリコン、とでも言えば通じるだろうが、今ではよけいわからなくなる。
 その前に、もう少し基本的なことを書こう。ゲルマもシリコンも「半導体」である。電気を通す物質を「導体」、通さない物質を「絶縁体」というが、半導体は「電気を半分通す」物質……ではない。そんな便利な素材は世の中にない。半導体は「電気を一方向にしか流さない」物質のこと。英語ではセミコンダクタ。代表的な例としてダイオードがある。これはアノードからカソードの方向にしか電流が流れない。(ダイオードとは物質の名前ではなくて、そういう機能を持ったパーツのこと。二極真空管をそう呼んだ名残り)
 電流を一方向にしか流さない物質はけっこうある。河原の石の中にもゴロゴロあるくらいだ。私は高校の時に化学が大嫌いだったので詳しくは書けないが、いろんな物質が半導体になり得るらしい。特に、ある種の物質は、それ自体は半導体でなくても、不純物をちょっぴり加えると優秀な半導体になる。セレン、ゲルマ、シリコン、ガリウムなんかがそれにあたる。そして、おおむねこの順番で「半導体」は実用化された(のだと思う。私が使った順番だから)。
 電気を一方向に流すだけでは、いいところ整流にしか使えない。ところが、ダイオードでいうアノードとカソードの間に、ちょっとした仕掛けを設けて第3の足を付けてやると、どういう魔法でか、第3の足から流し込む電流の大きさに従って、アノード/カソード間の電流が大きく変化する、ということに米国の偉い科学者が気付いた。(なんといういい加減な書き方!) 第3の足に流す電流はごく小さくていい。それにつれてダイオードを流れる電流が大幅に変化する。これこそ「増幅」ではないか!……で、トランジスタが誕生した。
 トランジスタでは、アノード/カソードを「コレクタ/エミッタ」と呼ぶ。第3の足は「ベース」だ。最初期のトランジスタの実験では、実際に鉱石の両端にリード線を付けてコレクタ/エミッタにし、細いピンで鉱石のあちこちを突っついて最良のベースの位置を決めていたようだ。だから、ヤル気になれば、誰でもトランジスタを作れるのかもしれない。
 その元になるダイオードに何を使うかで、トランジスタは「ゲルマ」と「シリコン」に分かれる。製品化された当初はゲルマばっかりであった。作りやすかったからだろう。次にシリコンが現われた。ゲルマにくらべて、概して増幅率が大きく、電気的な諸性能も優れている。だから今、ただトランジスタといえばシリコンタイプを指す。シリコン全盛で、少なくとも国内ではゲルマは作られていない(はず)。私たちが入手できるゲルマ・トランジスタは、すべて「在庫品限り」の製品だ。(このファズも早く作らなければならない……ほどでもないけど)
 ここで注意しなければならないのは、ゲルマがシリコンに駆逐されたのは、あくまでも「経済性」の問題からだということ。増幅率の大小も、結局は経済性に結びつく。決して「音」が悪いからではない。なんだかCDに駆逐されたアナログ・ディスクの運命に似ている。どこかのメーカーが「音」に注目して、経済性を度外視してゲルマ・トランジスタの開発を進めていたら、もっと優秀な石が作られていただろう。
 電気的な性能の面で、ゲルマとシリコンの最大の違いは、動作可能最低電圧にある。最近では回路技術の発達でシリコンでも驚くほどの低電圧動作も可能になっているが、基本的にはゲルマの方が低い電圧でも動く。これはダイオードを比較すれば明白。シリコン・ダイオードはアノード/カソード間に約0.7Vの電圧差がないと電流は流れない(早い話、ダイオードとして機能しない)。ゲルマでは、これが約0.4Vで済む。ゲルマの方が低い電圧から働くのだ。今回のファズも、電源は1.5Vの電池1本。同じ回路なら、シリコンでは絶対にできない芸当といえる。
 この最小動作電圧の差も、音に影響しているのではないかと思う。正直言って、どうしてゲルマとシリコンの音がこうも違うのか、私にはわからない。しかし現実として違う。現実は素直に受け入れよう。ヘタに詮索を始めると石の設計までしたくなりそうだから。
 エフェクタ愛好家の中には「ゲルマ・ファン」とでも呼ぶべき人々がいる。ゲルマのエフェクタ、特にファズを探し続け、集める人たちだ。納得できることではある。現在、演奏する上で「ゲルマのファズだけ」で済むとは思えないが、音楽によってはシリコンではイメージが合わないこともあるだろう。両方を持っているのが望ましい。ところがゲルマのファズはビンテージものやレプリカがほとんどで、入手は容易ではない。だから作る。これ、正解。
 項の最後に「ファズ・フェイス」の話。昔、GM誌でコピー製作したとき、「石はゲルマだ」と思い込んでいた。それなりの裏付けがあってのことだったが、今更遅いにしても訂正しておこう。ジミヘンが使っていたファズ・フェイスはシリコンでした! そもそもファズ・フェイスは謎の多いマシンで、果たして最初からシリコンだったのか、最初はゲルマで途中からシリコンに変わったのか、全然わからない。ま、あの野蛮な回路なら、どちらを使っても動くことに変わりはない。ただ、サウンドは違ってくるだろうし、シリコンの方が扱いにくいだろうことは想像に難くない(ゲルマだって使いこなすのは難しいから)。

■回路とパーツ■

 今回の回路はとてもシンプルなのでブロック図を出すほどもない。いきなり回路図で行こう。石が3個、VRが2個のあっけない構成。昔の回路は「お飾り」が無く、これでいいの?と思えるようなものが多いが、(その伝統を継承しているのがエレハモ!?)このマシンも例外ではない。ファズ・フェイスなどに比べれば、まだ複雑な方といえる。
 忘れないうちに書いておこう。なにしろご覧の通り電源が1.5Vなので、今回は入出力バッファや外部電源対応端子は付けようがない。1.5Vで入出力のバッファを組むためには、それ用にゲルマ・トランジスタが、あと2個必要。貴重な「資源」を無駄にしたくはない。外部電源も、付けようと思えば付くが、10V以上の電圧を1.5Vまでドロップさせる(落とした分は熱になる)のは無駄の見本だし、このマシンはプラスがアースになるマイナス電源仕様。どうにもやりにくい。(だ〜れ、DC-DCコンバータなんて言ってるのは?)それに、マシン動作時の消費電流は、何と0.2mA以下! 単3電池の自然放電の方が大きそうで、新品電池を入れておけば1年はもつだろう。
 さらに、オリジナル・マシンのレプリカ、みたいな意識もあったため、入出力バッファ、外部電源はスパッとやめてしまった。その点、ご了承を。

GE FUZZ回路図

gif形式回路図ダウンロード 印刷用の回路図。
少し大きめに
描いてある。
    CANDY6形式回路図ダウンロード CANDY6形式の回路図。
LHAで圧縮。

 今回の図はデカいから、画面から剥ぎ取っても印刷に耐えるだろう。よりきれいな印刷をお望みの方はホットイメージから右クリックでダウンロードを。緑色はgif形式、ピンクは私が原図を描いたCANDY6のC6形式をLHAで圧縮したもの。
 回路で印象的なのは、まず電源。006Pではなく単3が1本の1.5Vであり、しかも電池のプラスがアースに落ちている、いわゆるマイナス電源仕様であること。オリジナル機が出た当時は、まだ006Pが高価だったのかもしれない。にしても1.5Vで全部が動くのは驚異。マイナス電源仕様は、今でこそ珍しいけれど、その昔にはごく一般的だった。自動車にもマイナス電源仕様があって、私が運転を始めた頃にはバッテリ交換時には要注意だった。というのも、昔のトランジスタはPNP型が多く、本機もそうだが、電流がエミッタからコレクタに流れる。簡単に言えばアースから電源ラインに向かって電流が流れるため、電池のプラス側をアースに落とすと都合がいい次第。カーラジオにもそういった回路が採用されていたから、「マイナス電源」の自動車があったのだと思う(もっと重要な意味があったのかな?)。
 現在、こんなややこしい電源方式はまず無い。あっても機材の全回路の一部で部分的に使われているだけだ。なお前回までの製作で使ったトランジスタは全部NPNタイプ。これはコレクタからエミッタに電流が流れるから、安心して電池のマイナスをアースに落とせる。
 ゲルマ石のエフェクタを作る際に必ず問題になるのが石の調達。「どこに在庫があり、どこで売っているのか」が、そのときどきで違う。ひとつ幸いなのは、ゲルマ石は型番が違っていても特性にはほとんど差がないこと。そりゃ「2SB」と「2SD」の置き換えは不可能だし、特殊モノは例外としても、同じ2SBの小信号用ゲルマなら、大体同じ音になる。私は2SB77を採用したが、同時代の石ならほぼ何でも使える。あちこち探してみよう。ただし必ず「ゲルマ」であることをCQ出版のトランジスタ規格表で確認すること。「構造」の欄に「Ge.A」となっていればいい。ついでに足の並びを確認。現在の石と違って、昔はコレクタ・ベース・エミッタの順で並んでいた。(今は正面左からエミッタ・コレクタ・ベース) そしてコレクタに当たる足の本体部分に「C」の印字やドットが付いていた。ゲルマ石探しはかなり大変で、1年後には2SB77はもう無いかもしれない。少し買いだめしておこうか。
 それじゃ回路の細かいところを見てみよう。信号は基板穴1から100kと0.01を通ってQ1に加わる。Q1のベースからアースには1Mが落ちている。これはどういうことかというと、0.01のコンデンサは、いわゆるカップリング・コンデンサというもので、楽器からの信号の振幅(0Vを中心に振れている)をQ1のベース電圧を中心に振れるようにする、つまり信号の直流電位を変えるものだ。わかるかな? この説明でわからなくて、それでも理解したい人は私の本を読もう! 洋泉社から出ている「サウンド・クリエイターのための電気実用講座」2900円。いや、これは広告じゃないよ。カップリング・コンデンサの動作をきちんと説明するには、「そもそもコンデンサとは?」から始めなければならず、コンデンサの動作を一般人にもわかるように書いてあるのは、残念ながら私の本しかないから。(それに、この本、売れたところで、今のところ私に印税は入らない)
 ここの100kは、マシン全体の入力インピーダンスを上げるためのもの。本当なら1MΩ程度にはしたいのだろうが、そこまで上げきれず「せめて100k」にしたのだと思う。しかし、少しわかった人が見ると、100kの先に1Mがアースに落ちていて、入力インピーダンスは1M+100kに思える。そう、たしかにQ1がFETならそうなる。しかしトランジスタのベースには微小ながら電流が流れ込む(or流れ出す)。ベースの入力インピーダンスは低いと思わなければならない。特に昔のゲルマ石は電流増幅率が小さいので、ベース電流も無視できない。そんなこんなで、まずはメノコ計算だが、Q1のベース入力インピーダンスは10kΩ以下だろう。いくら1Mが並列に入っていても、その横で電流がザーザー流れてしまっては意味がない。結局、マシンの入力インピーダンスは、アタマの抵抗=100kΩと思えば安全。それ以下にはならないからね。
オリジナルのスイッチ構成  回路の入力インピーダンスが100kだとすると、エフェクト・オフ時にもつながっていては他の機材(楽器アンプや他のエフェクタ類)に影響を与えかねない。昔のエフェクタは、そのあたりには無頓着で(伝統的にエレハモも!)左図のような構成が多い。というか、ほとんどこの形式。オリジナル機でもこの方法が使われている。スイッチが3pで済んで経済的だし(それとも当時は6pのフットスイッチが無かった?)、他の機材への影響と言ったって、「そーゆーものだ」と覚悟してしまえばプレイヤーも痛痒は感じないのかもしれない。でも私としては、いかにも気持ちが悪い。で、スイッチを6pにして入出力ともに切り替え、エフェクト・オフ時には、回路を完全に切り離すようにした。電気的にはこれが正しいと思う。でも「あのファズをつないで、エフェクト・オフにしたときの、他のエフェクタのかかりがイイんだよね」なんていう人もいるかもしれない。あくまでオリジナルに迫りたいなら、3pスイッチを使うべし。ミヤマのスイッチの型番は、6pが「DS-008」、3pが「DS-136」だ。DS-135だと2pになるので間違えないように。
 ついでにパワー・スイッチの話もしておこう。オリジナル機ではVOLのVRがパワー・スイッチも兼ねていて、絞っていくとカチッとクリックがあり、それでパワー・オフ。昔のラジオと同じだ。現在、そんなVRは入手不可能。秋葉原のジャンク屋を回ればあるかもしれないが、そこまでオリジナルにこだわるならケース(鉄板製!の細長い三角型)も昔のまま復元したい。(どなたか、このエフェクタを500台以上量産したい人はいませんかぁ。手伝いますよぉ) ケースの材質・形状やパワー・スイッチの方式などは「音」とは無関係な部分なので、今回はごく一般的な材料・方法を採用した。ケースは、自作エフェクタの定番、タカチのTS-11、スイッチはOUTジャックにプラグが差さるとオン。オリジナルとだいぶ違うが、音は同じだから妥協することにしよう。
 Q1はエミッタフォロワで、働きとしてはゲイン=1のバッファだ。電流増幅だけで電圧増幅はしていないから、信号のレベルは変わらない。Q1の出力は1μでカップリングして、本機の心臓部、Q2に送られる。
 トランジスタがオーディオ的に「最適な」増幅をするには、ベースの電圧を、これまた「最適に」設定しなければならない。これが狂うと全然増幅しなかったり、増幅しすぎて歪んだりする。結構シビアなのだ。Q2のベースには電源ラインから470k、アースへは2.2k(その他モロモロ)がつながっている。これらの抵抗がベースの電位を決める。ATTACKのVRが絞り切られて、2.2kが直接アースに落ちた状態のとき、Q2はマジメに増幅動作を行なう。ほとんど歪みは発生せず、この段の出力部であるコレクタにはほぼ原音が出てくる。
 VRを上げていくと、2.2kにVR+18kが加わり、ここの抵抗値は大きくなってベース電位は下がる(プラスがアースだから)。オーディオ的に「最適な」状態から離れることになって、増幅率が上がるとともに歪が発生する。これが本機のファズの原理。トランジスタの動作点を故意にズラして歪ませる方式。わりと珍しい方法といえる。
 100kBのVRには18kがパラに入っている。こうすると約15.25kのVRになり、カーブもBではなくCまがいになる。本当はBカーブの方が使いやすいのだが、まあエフェクタだから音質が変化すればよく、カーブなど問題ではない、と設計者は思ったのだろう。オリジナル機では、パラの抵抗は18Kではなく22k。でもこれだとVRの半分程度までしか音質変化せず、それ以上回しても同じ音になる。だから18kにした。それでもまだコントロールしやすいとは言いにくいので、15kや12k、もしかすると10kにしてもいいかもしれない。その辺は各自の好みで。
 このVRの名称は「ATTACK」になっている。う〜む、そうなのかなぁ。今、名前を付け直すとすれば、迷わず「DRIVE」だろう。私としては設計者に敬意を表して、古きものを尊ぶ意味からもオリジナル通りの名称にしたが、これも各自で決め直してもらいたい。
 Q3は単なる増幅を行なう。歪は発生しない。エミッタを直接アースにつなぐ、低電圧動作ではよく使われる電圧増幅段だ。コレクタからVOLのVRには0.01のコンデンサでカップリングしているが、オリジナルでは0.0033(!)が使われている。あまりにも低域無視なので、今回は0.01にしてみた。結果は評価の分かれるところだろう。低域が延びた分だけ音質がわずかに変わった。どっちが良いとは言えない。オリジナル通りに作りたい人は、0.01ではなく0.0033でやってみよう。音質に直接影響する部分なので、各自実験して決めてもらいたい。
 恐ろしいことに、出力の信号はVOLのVRから出力端子に直接つながる。間にスイッチが入っていても、スイッチは能動素子ではないから電線と同じ。ということは、本機の出力インピーダンスはかなり高く、しかもVRを回すとどんどん変わることになる。入力インピーダンスの問題と同じで、昔のエフェクタ(やエレハモ)には、かなり採用されている方法だが、私にはこういう仕様は非常にムズ痒く感じられる。どうしてもVRの後に1段、バッファをかませたくなる。でも省資源の観点からとオリジナル回路の尊重から、今回は我慢我慢。まあ、徹底的にやるのなら、電源電圧9Vのスイッチ&バッファユニットを別に作り、それでゲルマ回路全体を包み込んでしまえば完璧だが、そんなことをすると周辺の方が大がかりになって、一体何を作っているのかわからなくなる。結局やめた。水虫と違うから、このムズ痒さにはいずれ慣れるだろう。第一、「音」がいいから全部許せる。

■ 製 作 ■

 なるべく簡単に、初心者の自作第1号機にもなるように心がけた。GMで作ったときには小型ケースのタカチYM-100にギリギリで組み込んだが、今回は余裕というかスカスカのTS-11。シールド線は1ヶ所も使っていないし、配線材の色数も最少では2色で済む。
 試作機の試作をしていて(つまり最初の段階、バラックで組んでいて)消費電流が0.2mAと極端に小さいのに気付いた。しかも電池は容量の大きい単3。一度電池を入れたら、一生もつのではないか、と思えるほど。そこで電池交換の手間などは考えず、電池までホルダごと基板に乗せてしまった。この方が、かえって電池交換が楽になったから皮肉ではあるが、われながら美しいアイディアだと思っている。

★基板の製作

 基板のサイズは35×66ミリ。そのうち回路部分は半分で、残りは電池ホルダが乗るスペースになる。ICは使わないから基板のサイズは多少ラフでも構わない。パターンは簡単そのもの。手描きで充分。

プリントパターン gif形式プリントパターン
gif形式の印刷用プリントパターン。
少し大きめに描いてある。

CANDY6形式パターン
CANDY6形式のプリントパターン。
LHAで圧縮。


 ダウンロードの方法は回路図と同じ。この画面から落としてもいいけれど、できれば右側のホットイメージから右クリックの方がベター。少し大きめに描いたgifファイルとLHAで圧縮したCANDY6形式の元図を用意した。CANDYでなら原寸でプリントアウトできる。

 次はパーツレイアウト。これもダウンロード用に2種類のファイルを用意した。CANDY6を使える人は、非表示になっているレイヤを「表示」にすると、パーツ面から透視したパターンが見える。

基板パーツレイアウト 基板写真
gif形式基板パーツレイアウト。印刷用
 gif形式のパーツレイアウト。
 印刷用。
CANDY6形式パーツレイアウト
 CANDY6形式パーツレイアウト。
 LHAで圧縮。
 ね、簡単な基板でしょ。オリジナル機では基板は採用されていなくて、何やら汚らしいベークライトみたいな板にハトメを打ってパーツをハンダ付けしていた。電池ホルダはブリキ製で、これが大問題の発端だったのだけれど、その話は珍品堂と懐古軒が名探偵になって解決している(なんて書いても、初めての人にはわからない。ごめんね)。
 写真からもわかるように「B」はトランジスタ。小さな丸点が打ってある方がコレクタになる。昔のゲルマ石の足の並びは前述した。そしてこれら3本の足は、今の石みたいに一直線には並んでいない。中央のベースが横に寄っていて、下から見ると「く」の字形に並んでいる(見る方向によっては逆の「く」の字だが)。パターンは石に合わせて作ってあるから、自然に入る方向に入れれば極性の間違いはない(はず)。でもまあコレクタの位置くらいは確認して取り付けよう。トランジスタ本体にも「C」のマークや丸点が付いている。これを「コレクタマーク」と呼んでいた。サイズも大きく、横の電解コンデンサと比べても、昔の石の立派さがわかる。
 基板には抵抗・コンデンサ・トランジスタの順でハンダ付けする。当然だが電解コンデンサの方向には注意のこと。トランジスタは現在の製品より熱に弱い。手早く確実にハンダ付けして、必要以上の加熱は避ける。あまり熱くしすぎると、本当に死んでしまうよ。
 最後に電池ホルダを取り付ける。正式(?)な取付方法としては、ホルダの底面にある3ミリの穴に合わせて基板に3.2ミリの穴を開け、皿ビス(アタマが平らなビス)とナットで留めるのだが、そんなのは面倒くさい。私は強力な両面テープを使用した。両面テープといっても紙用のナイスタックみたいなのでは強度不足。各社から出ている、厚さが1ミリ程度(中間層にはスポンジみたいなものが入っている)の強力型がよろしい。私が使ったのはコニシ製の「高性能ボンド両面テープ」(BOND SS TAPE)というもので、300円くらいだった。家に「絨毯用」の両面テープなどがあれば、適当な幅に切って使える。
 どういう付け方をしても構わないものの、一番確実なのは次の方法。まずホルダ底面全体に両面テープの片面をしっかりと貼る。次にホルダのプラスとマイナスの端子に抵抗リード線の余りなどを、下に向けてハンダ付け。これが基板穴の7と8に入る。ホルダの方向を確かめて(逆に付けたら後始末が大変!)、両面テープのもう片面を出す。端子からの2本のリード線を7と8に入れ、そうっと基板に接近。正しい位置に来たらテープを接着。そしてホルダを基板に押しつけながら基板穴の7と8にリード線をハンダ付けする。つまり両面テープと2ヶ所のハンダ付けでホルダを固定するわけ。文字で書くと長くなるけれど、やってみれば案外簡単だ。終わったら電池を入れてみよう。正常に入ればOK。電池は配線が終わるまで外しておく。
 そうそう、忘れないうちに書いておこう。このマシンに使う電池は一番安いマンガン電池でいい。赤い方のヤツね。黒いのはもったいない。ましてアルカリ電池など、使うだけ損だ。黒いマンガンやアルカリは、長寿命というより瞬間的に大電流を流す用途(例:ミニ四駆!)にこそ向いている。長期間にわたって小さな電流をトロトロと流すのなら、どの電池でも性能は変わらない。だから本機では一番安いのでいい。もっとも、コジマで一番安い単3電池は4本95円のアルカリだが……(だけど、あの安いアルカリは、どうも容量が極端に小さいような気がする。気のせいか?)
 これで基板は完成。心配な人はスクロールすると出てくる「結線図」を見て、VRやジャックを仮づけして(バラックという)テストしてもいいだろう。バラックだとノイズが多少大きくなる可能性があるけれど、音の確認はできる。

   ここで恒例の初心者用、カラーコードの読み方など……。

   抵抗カラーコードの読み方
     2.2k=赤赤赤、10k=茶黒橙、18k=茶灰橙、100k=茶黒黄、470k=黄紫黄、1M=茶黒緑
     [以下、予備として、15k=茶緑橙、12k=茶赤橙]
      (金色の線は精度5%を表わす。どうでもいいので無視する)
   コンデンサの表記
     0.01=103 [予備として、0.0033=332]

★ケース加工と配線など

リアパネル写真  なにしろ中身がスカスカなので、パネル・デザインはご自由に。正面パネルの様子は最初の方の写真でわかるだろう。パネル文字が見えないと困るから一応書いておくと、2個あるVRの左が「VOL」、右が「ATTACK」。リアパネルは右の写真の通り。D−FUZとはIN・OUTの位置が逆になっている。
 VR2個、ジャック2個でも、いつも書いているように文字は必ず入れておこう。手書きでも何でもいいのだが、インレタも(カネはかかるが)使えば楽しいもの。今回採用したのは、ツマミとジャックの文字がI・C(インレタのメーカー名)のラウンド・ゴシック「A-3.5C」、GEの飾り文字は、各社から出ている「BROAD WAY」という書体の72ポイント。FUZZの文字は、これぞ貴重品で、I・Cがチャートパックという名称だった頃に出していた「HARRY OBESE」という書体の36ポイント。このインレタシートはもうディスコンで、絶対に手に入らない。最近、各社のインレタから良い書体、面白い書体がほとんど消えてしまった。一説によると、いわゆる電子製版が普及したために版下を作る必要がなくなったからだという。そんなら、少なくともデザイナー御用達のMacには、面白い書体を最初からちゃんと入れておいてくれ、と言いたい。フォント・セットが数万円では、私には手が出ない。インレタは高いといっても、大判1枚で760円だった。速いCPUは要らない。使える材料が欲しい。まさに人民に創造性を失わせしめる悪い世の中だ。
 おっと、脱線。で、ケースの加工法はいつもの通り。表面保護のビニールの上に細い油性ペンで線を引いて穴位置を決め、ドリルとリーマで穴をあける。ビニールは加工が全部済むまで貼っておく。加工後にビニールをはがしてパネル文字を入れ、それからパーツを取り付ける。ヴォリュームのシャフトが長すぎる場合(たいていそうだ)は、シャフトを万力でくわえて金ノコで切る。ヴォリューム本体の側を固定して切ってはダメ。100%の確率で内部が壊れる。
 配線は、まず基板から必要な線を出しておき、基板を3ミリのスペーサを入れてケースに固定。それから各所のハンダ付け。基板とは無関係な配線もあるので注意。今回、シールド線、ヨリ線は使わなくても構わない。全部単線でいける。ただし、配線を長く引き回すところでは必ずケースに這わせるようにしよう。短い配線は適当でいい。また、「美しく」配線しようとして、ワケもわからず線をヨリ合わせてはいけない。このマシンだって作り方によっては発振する。参考までに結線図・写真を以下に示そう。

ケース内結線図 ケース内の写真 gif形式結線図。印刷用
gif形式の結線図。


CANDY6形式結線図
CANDY6形式結線図。
LHAで圧縮。
 今までで一番簡単な結線図。初心者でもビビらないだろう。こういった簡単さが昔のマシンのいいところ。それでも音は最高。前回の小沢の記事ではないが、「おぉ、50年間の回路技術の進歩はどこ行ったんだ!」。また話は飛ぶけれど、前回の「新作・旧作 発掘報告班」で彼が採り上げたエジソン録音によるレコードには本当にぶっ飛んだ。1929年に、すでにこれだけの音質で録音ができていた! 音の「質感」といい、ヴォーカルと伴奏のバランスといい、現在の日本で、デジタル仕掛けで録音されたCDよりも数等上を行っている。当時のことだから、多分ワンマイク(カーボンだと思う。コンデンサもあったけど……)のダイレクト・カッティングだろう。今、1本のマイクで、あれだけの音を録れるエンジニアがいるだろうか? 周波数特性や指向性は良くなったとしても、あれだけ「ツヤ」のある音を拾えるマイクがあるだろうか? 機械というもの全般に言えることだが、その「進化・発達」は、その分だけ人間をダメにしているような気がする。
 機械に依存して、機械に振り回されて、結局機械に隷属して、それが当然だと感じもせずに自然に受け入れている人間の堕落。私はそうはなりたくない。カメラは自分でピントと絞りを合わせたいし、クルマのギアチェンジも自分でしたい。WindowsがトラブったらDOSレベルで直したい……なんて考えるのは、やっぱり古い人間なのかなぁ?
 原稿料が無料なのだから、少しは書きたいことを書かなきゃ(全編そうだろ、の声)。で、元に戻って、結線で問題になりそうな箇所はOUTのジャック端子かもしれない。図ではジャックを「ステレオSW付」にして描いてあるが、たまにピン配置の違うものもある。また「ステレオSW無し」でも使える。要は、基板の9番穴からの線が、プラグが差さったときにアースにつながる端子(ステレオプラグならスリーブ=中間リング部につながる端子)に配線されればいい。フットSWからの線は、これは出力だから、プラグの先端部分(チップという)につながる端子に接続する。写真でも多分わかると思うけど、私が使ったのは「ステレオSW無し」ジャック。このタイプは一時期、電気街から姿を消していたけれど、最近また見かけるようになった。SW付よりも安い。
 回路全体のアースは入力ジャック部分でケースに落としている。だからジャックのアース端子への配線も忘れずに。まあ、パワー・オンの状態では、OUTジャックでも回路のアースはケースに落ちるので問題は無いと言えば無い。でも、オーディオ回路の鉄則として「ケースへのアースは、信号が一番小さい箇所で落とす」というのがある。S/Nを少しでも良くするための基本だから憶えておいても損はない。

■ 音 出 し ■

 図面と合っていて、ハンダ付けさえちゃんとしていれば一発完動を保証する。操作法の説明は要らないだろう。ファズ・フェイスのように、使い方のコツも特にない。1時間も鳴らしていれば、誰でもすぐに使いこなせる。とにかく楽器とアンプを用意して鳴らしてみよう。
 フットSWで原音とエフェクトが切り替わる。切り替え時のクリックは、予想よりはるかに小さい。理由は不明。良ければいいのだ。
 サイケ70時代の強烈なファズに比べて全体のトーンは柔らかいし、軽くかければディストーションにもなる。といって、2個のVRをフルテンにすると、さすがにファズで、これは強烈なサウンド。
 ATTACKを上げると音量も大きくなる。理由は本機の原理のところで書いた。2個のツマミを少しずつ調節しながら、原音との音量差も考慮して好みのサウンドを探そう。原音を一切使わず。本機をかけっぱなしにするなら原音とのバランスなんかどうでもいいが。
 さあ、これが60年代、エフェクタ発生期の元祖ファズの音。純粋にゲルマの音。作って鳴らしてもらえば、どうして私が3回も同じ回路のマシンを発表したかわかってもらえる。ハニー/エーストーン系のサイケなファズも好きだが、この暖かみのあるサウンドも手放しがたい。ジミヘンが初期に常用したのも当然だろう。
 敢えてアラ探しをすれば、現在のマシンよりも残留ノイズが多いこと。石が古いせいでもあり、回路構成のためでもある。でも、いわゆるエレハモのマシンは、どれもこれも(現在の製品を除いて)この程度か、これ以上のノイズがあった。良いエフェクタにデジタル音源並みのノイズ性能を求める方が間違っている。それに、多いのは「残留ノイズ」(無入力時のノイズ)であって、S/Nが悪いわけではないから、実用上は問題は無いはず。
 パーツ代も安く、製作の手間もかからないこのマシン。1台持っていても絶対に損はしないと保証しよう。使えるのはギター弾きだけではない。軽くかければキーボードにも向いているし、キング・クリムゾンをやりたいのならヴォーカルにも使える。ゲルマ石が全滅する前に、作っておかなければならないマシンだ。

 さて次回は、趣をコロッと変えてマイクアンプを作ろうと考えている。スタジオでもステージでも使えるが、メインはポータブルDATと組み合わせての野外収録。バランス入出力でアンバラ出力も付ける。ゲインは3段切り替え。マイクレベルをライン(に近く)まで持ち上げられる。そして何よりも12〜18Vのファンタム電源を内蔵するから、野外でマジなコンデンサマイクが使える! 私自身が欲しいから作る機材。試作のバラックはもう出来ている。乞うご期待なのだ。


■主要パーツリスト■

★基板上
  トランジスタ 2SB77(または小信号用PNP型ゲルマ) *2
  抵抗(1/4W型5%カーボン)
     2.2k*1, 10k*4, 18k*1, 100k*1, 470k*1, 1M*1
  VR(18φ) 100kB *2
  コンデンサ
 マイラ:0.01*2
 電解(耐圧6.3V以上):1μ*2
  単3電池ホルダ(1本用)*1

★基板外
  ケース:タカチTS-11 *1
  ジャック:モノラルSW付 *1
       ステレオSW付(orステレオSW無) *1
  フットSW:ミヤマDS-008 *1
  ツマミ(15〜20φ) *2
  スペーサ 3φ用3ミリ *2
  ビス・ナット 3φ10 *2組
   以上の他、配線材が必要です。


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