Handmade Project タイトル

★☆第3回【SOUND BOX ノイズ・ジェネレータ】の製作☆★

 アナログシンセのノイズとデジタルシンセのノイズ、どこかひと味違う。聴いていて、やっぱりアナログの方が「落ち着いた音」に感じられるのは、私の先入観のなせるワザか?
 そもそもデジタルでノイズを作るのは非常に難しい。デジタルは「ある波形」を作るのには向いていてもメチャクチャな波形は作れない。プログラムされた波形しか作れないから、ともいえる。ノイズはランダムの見本みたいな波形。ランダムやカオスはプログラム不可能である。ま、苦労すれば「極限までランダム」なプログラムはできても、「完全なランダム」は無理。
 デジタルでノイズを作る場合、乱数を使って波形テーブルを読み出したり、アナログ的な発想でデジタル信号をフィードバックし、一種の暴走状態にして「ノイズまがい信号」を得ている。でも、いずれにしてもデジタルの悲しさ、出てきたノイズは「規則性」を持ってしまう。規則があったらノイズじゃない。混沌だからノイズなのだ。その点、アナログは最初から混沌であり、それに規則性を持たせることで音にしている、ともいえるから、ノイズなど簡単に作れる。(そう、あなたの作ったアンプがノイズだらけなのは、規則性の持たせ方が不足しているからだ、と言えなくもない) このあたり、アナログとデジタルの根本理念の違いが如実にわかって面白い。
 とはいえ、いかにアナログでも、簡単にノイズが得られるようになったのはトランジスタ時代以降のこと。真空管時代には「きれいなノイズ」はなかなか作れなかった。以下、老人の繰り言になるので、興味のない方は次の小見出しまでスクロールを。

 私が最初に「ヘンな音」に興味をもったのは高校のときだった。それまでは、よくあるパターンで、鉱石ラジオから始まり、無線に走って(あっ、私のコールサインはJA1NEMです。気軽に声をかけてちょうだい)、ハイファイ・アンプにはまり、プレーヤからエンクロージャまで自作のステレオを作ったり(小遣い稼ぎになった)、電気楽器が登場すると楽器アンプにノメって、果てはPAシステムの自作に金を注ぎ込み……と、いわば「音」の正道を歩いていたのだけれど、「お友達」が悪かった。
 私の高校は中学から一貫教育の、いわゆる進学校。自由放任というか、勉強以外は何事につけどうでもいい学校だった。クラブ活動も5人以上のメンバーがいれば「部」が成立して部室がもらえ、各部室には灰皿の常備が義務づけられていた(無論、成文化はされていなかったけど)。教師は部室や生徒会室には絶対に来ない。部活動にも一切口を出さない。だから一人の生徒が、いくつの部に入っていても構わなかった。私が所属していたのは物理部電子工学班、文芸部、美術部、演劇部、音楽部。その全部で、しっかり真面目に活動していた。当然、勉強などする余分な時間は無く、受験勉強などはモノ好きな連中がするものだと思っていた。
 物理部では、当時まだ実験段階だったUHF(特に400MHz帯)通信を試行錯誤していたし、文芸部では小説を書きまくり、部誌を隔月刊ペースで出していた。美術部と演劇部は、実はほとんど同じメンバーで、展覧会や小劇場の観劇にせっせと出かけ、画集とシェークスピア全集を部費で買っていた。音楽部はちょっと特殊な事情。なんと、楽譜が読める人間が部内に二人しかいなかったのだ。私が抜けるとアカペラの独唱会しか開けない(もう一人はオペラ歌手志望)。仕方ないから私がピアノの伴奏を引き受けていた。ね、これだけやって、残りの時間はモダンジャズの喫茶店か競輪場にいれば、勉強時間は無くなる。
 高校2年の春、演劇部で唯一の演劇(専門)少年だった飯田君が(元気にしてるかな?)「文化祭で芝居をやろうぜ」と言い出した。思い起こせば演劇部に参加して以来、つまり5年間、一度も「公演」をしていない。もっぱら「研究」ばっかり。ま、在校中に1回くらい公演してもバチは当たらんだろう、それに面白そうだし。衆議一決、その場で担当まで決まった。作、演出、主演はもちろん飯田君。助演は、これまた物理部・文芸部かけもちの生田君。道具類責任者は美術部かけもちの入倉君。照明と効果音は私。ここまではよかった。(こういう奴等の名前は忘れられない)
 芝居の効果音については、実は小沢が現役なので、あとで秘かに講評してもらうとして、私の最初の効果音について書いてみよう。
 飯田君が書き上げた芝居の台本を見て驚いた。タイトルが「ストリップ」というのはいいとしても、中で使われる効果音の指定が「前衛」してるのだ。たしかに彼が小劇場演劇にカブれているのはわかっていたが、オープニングが「水中で革命を聞く音」。その後、意味不明の音ばかり指定されている。台本を何度読んでも、まったくイメージできない。仕方ないので、忙しい時間をヤリクリして、最初の読み合わせから稽古に付き合った。今にして思えば、これがすごく勉強になっている。芝居や映画の効果音は、稽古の現場に張り付かなければ的確なイメージはつかめない。
 その当時、私が持っていた機材は、自作のステレオ・システムとテレコ(もちろんオープンのモノラル)が2台だけ。ただ、音の素材は生来の収集癖もあって、いろんな音をストックしていた。面白い音はテレコで録って、テープは素材ごとに短く切って8ミリ映画フィルムのリールに巻いておく。これが数十本あった。ビートルズがエド・サリバン・ショーに出たときの音も録ってあった。
 今でこそ簡単なオーディオ・ミキサなど、どこにでもころがっている。当時も、あることはあった。ただしプロ用。高くて買えっこないし、自作できるのに買うのもシャクだから、私の効果音作りは、まず機材作りから始まった。機材といっても、ケースに入れてしまうと回路定数の変更に手間がかかるので、10ミリ厚のベニア板にアルミのLアングルを立て、アングルをシャーシ代わりにして回路を組んでいった。配線部分がむき出しなので、いつでもCRの付け替えができる。全部真空管回路なのは言うまでもない。ベニア板は60センチ角くらいだったと思う。このとき作った「機材」は、回路の追加/削除を重ねながら、大学卒業まで、私の虎の子マシンになった。最初の基本設計は忘れもしない。以下に書いてみよう。
 組み込んだ回路は、まず電源。4チャンネルのアクティブ・ミキサ。当時「英国型」と呼ばれていた回路形式のトーンコントロールを2組。大きく分けると、この3種類だ。ミキサのうち2チャンネルはゲインをほぼ無限大までとれるようにしてあり(「飢餓回路」を採用)、信号を歪ませたり、無信号時の球ノイズを得たり、ときには発振もするようにした。残りの2チャンネルは普通のミキサだが、この回路はミクスされた出力だけでなく、各チャンネルのダイレクト出力も設けた。だから最大で4チャンネルの回路を直列につなぐこともできた(あの頃から発想はヘンだったんだ。ムツゴの魂……)。
 英国型のトーンコントロールにはVRとSWが付いていて、VRを絞りきるとフラット、ブーストorカットはSWで決める。SWをブースト側にしてVRを上げればブーストする。フラットな特性が得やすいのと、CRを変えれば周波数が簡単に変わるのが特徴。我がマシンには最適な回路だった。このトンコロは、言ってみればハンダごて併用のパラメだ。2組は完全に独立していて、これも直列につないでも使える。
 当時の私は「モジュール」という言葉や概念は知らなかったものの、ベニア板上で全回路を自然にモジュール化していた。ガキの発想は恐ろしい。各モジュールの入出力は110号ジャック(現在のフォーン・ジャックの原型。電話交換機に使われていたため、秋葉原でジャンクがいくらでも手には入った)で、必要に応じてプラグでパッチしたり、各回路のCRをハンダ付けで変えていた。だから作業中はハンダごては熱くしっぱなしという、製作と音作りが同時進行する恐ろしい状況。
「水中で革命を聞く音」は、このベニア板の上で誕生した。その内容は……まず小さなレベルでシャーというノイズ(球ノイズを軽くハイカットし、少しモヤつかせたもの)がフェイド・イン。ノイズの向こうから、ザラついた音色で、わざとワウ/フラを悪くしたストラビンスキーの「春の祭典」のイントロ部分(フルート)が、やはり小レベルで重なる(プレーヤの出力をアッテネートし、それを強引に増幅。ワウ/フラの悪化は、プレーヤの回転を手で邪魔すればいい。フランジャの原型?)。春の祭典のイントロが終わるのに合わせて、ノイズを少しずつ大きく、少しずつ低域をブースト。ノイズが大きくなり低域も出きったところで最大音量になり、同じ音量で大衆の叫び声のイメージ音が早いフェイド・インで重なる。そして1秒くらいですべての音をカットアウト。……以上が「水中で革命を聞く音」。
 大衆の叫び声のイメージ音というのは、前述したエド・サリバン・ショーでの女の子の絶叫がネタ。軽く歪ませて別のテープにコピーし、それを再生して、テープヒスを取るために高域を少し落として、また歪ませてコピー。この工程を、トンコロの周波数を変えながら何度か繰り返したら、「人間の声らしいけど、男か女かわからない、呻きとも絶叫ともつかない音」になった。これを作るのが一番大変で、3日間学校に行かなかった。
 と書けば、最初から計算して作ったようにだが、あの時は計算や目算など立てようもなかった。手当たり次第にやってみての結果オーライ。また、上に書いた音の加工方法は、すべて主な手段であって、実際はもっといじり回している。なにしろテレコが2台しかないのだから単純なピンポンしかできない。ピンポンの途中で、どう音を変えるかが難しく、変えすぎると生々しい人工的な音になり、変え足りないとS/Nが悪化するだけ。でもこれで「ヘンな音」の魅力に取り憑かれ、憑き物はまだ落ちていない。この芝居では、全部で5本くらいヘンな音を作った。
 本番では照明と効果音を一人で操作しなければならず、タイミングには冷や汗をかき通し。3回公演したが、3回とも満員札止めで、拍手が鳴りやまずにカーテンコールまでやった。とりあえず私たちの世代は義務を果たしたわけで、演劇部の下級生諸君は、あと5年間は「研究」に没頭できただろう。
 以後、大学入試時期など無関係に、ベニア板の上には様々な回路が乗ってはおろされた。最終的な決定版はついにできなかったが、その後追加されたモジュールは、発振器、コンプまがい回路、位相反転回路、スプリング・リバーブetc.。大学に入って映画の効果音を作るようになってからは、ベニア板にハンドルを付けて持ち運べるようにし、工具・交換パーツ一式と共にアフレコやダビング・スタジオに持ち込んでいた。映画学科の連中は私を放送学科だと思い込んでいて、文芸学科だと言っても信じてはもらえなかった(そりゃそうだろう。あっ、私は日芸です。それから「ダビング」というのは本来は映画用語で、映像にシンクロさせながらアフレコ台詞や効果音を付加する過程をいう。現在一般に使われている「コピー」の意味ではない)。
 付記すれば、写真学科の連中は、私を写真学科だと思っていた。こういう無害な誤解は放っておく。彼らの課題写真やレポートの代作・代筆は多少豪華な昼飯一食分になった。また、コダックの(当時の)標準フィルム現像液D-76はもちろん、アグファだろうがイルフォードだろうが、どんな現像液でも翌日までには作ってやった。これもかなり効率のよいバイトだった。私は高校の終わり頃から写真科学にもハマり、いわゆる「単薬」を買い揃えて現像液の新しい処方を試していた。たとえば書類コピー専用の超硬調フィルム「ミニコピー」で撮影し、それを階調が出るように現像する処方とか、印画紙現像で2号分硬調or軟調に出す処方とかで、使いようによっては、とてもヘンな美しい絵になる。だから標準現像液の処方など、風さえ吹いていなければ(薬が飛ぶのだ)10分もかからない。当時、私が挑戦していたのは、ピンホールカメラで、モノクロフィルムを使ってカラー写真を撮る方法だったが……この話は別の機会に。

■SOUND BOXシリーズ第2弾 [NOISE]■
SOUND BOX [NOISE]写真
 前号のAESレポートを読むと、多分に小沢の趣味が前面に出ているにせよ、アチラでは真空管機材が一大勢力になっているみたいだ。早く日本にまで伝染しないものだろうか。このページでも球機材を作りたくてウズウズしているのだけれど、双三極管1本が1000円もするようだと、リスキィすぎて手が出ない。それに、私が欲しいのは三極管だけではない。ローノイズの五極管・複合管も欲しい(実は、自分用には多数ストックしている。ニヤニヤ)。旧ソ連圏ではどんな球を作っているのだろうか。6AU6とか6U8のローノイズ管は無いのかな? そんなのが1本300円くらいで手に入るなら、そして高耐圧のコンデンサが多数出回るようになれば(要するに30年前の秋葉原)腕の奮いようがあるのだが。(私には2A3とか300Bとかにこだわる性癖はない。ミニチュア管や後期のGT管の方が設計も楽だし高性能だから。ノスタルジーや偏狭な懐古趣味は某MJ誌に任せよう)
 さて、今回は予告通り「ノイズ・ジェネレータ」を作ろう。アナログシンセに入っていた、あのノイズ源だ。簡単なフィルタも設けたので、「波の音」「風の音」「SLの音」なども手動で作れる。前回のOSCと同様、かなり使えるマシンだ。また、これは測定器ではないが、耳さえ鍛えておけばオーディオ機器購入の際の「良否判定」にも使える(使用法は最後に書こう)。

■ホワイトノイズとピンクノイズ■

 楽器でいう「ノイズ」は、ホワイトなら「シャー」といった音、ピンクなら「ザー」の感じ。今回は作っていないがレッドノイズというのもあって、これは「ゴー」に近い。慣れればどれも味わい深い(?)音色といえる。慣れない人には、ただうるさいだけだろうが。もっとも、慣れたところで、ピンクノイズを一日中聴いて感動にひたるなど、多少正気を疑うが、狂気とも言い切れない。適度にフィルタで細工したピンクノイズは、ちょうどボーイング747の巡航時の音そっくりで、私には子守歌になる。DC10は座席位置によって音が違うけれど、後部座席の音ならレッドノイズから簡単に作れる。エアバス300系統の音は……もうやめよう、ページが違う。
 とにかく今回作る「NOISE」ボックスがあれば、飛行機の音を始め、各種の効果音や、うまくやれば音程感のある一種の楽器音も作れる。アナログシンセの1モジュールを独立させたものと考えるより、これ自体が楽器だと思ってほしい。だから前回のOSCと同じく、理詰めの音作りはしていない。あくまでも「楽器」としての音源であり、出てくるのは「ホワイトノイズまがい」「ピンクノイズまがい」であることを最初にお断わりしておこう(アナログシンセもそうだった)。付属のフィルタにいたっては、定数の計算すらしていない。「このあたりが使いやすいだろう」のアテ勘で作り、まあごく一般的な用途なら、そのまま使えるはず。測定器ではないから、これでいいのだ。
 ここでひとつ基本知識。精密なノイズを発生させるのは非常に大変なことなのだ、ということ。
 電気音響学的かつ理論的にいうと、「ノイズ」の定義は相当に面倒くさい。たとえばホワイトノイズとは「1Hzあたりの帯域に含まれるエネルギーが同じノイズ」である。つまり、ノイズにはいろんな周波数成分が含まれているけれど、それがまんべんなく同じ大きさで含まれていなければならない。たとえば50Hz〜51Hzの間の1Hzにあるエネルギーと、1000Hz〜1001Hzの間の1Hzにあるエネルギーが同じ、ということ。しかも、理論的には周波数の下限も上限も規定されていない。まあ下限は0Hz(直流)で打ち止めだが、上限は高周波の領域を超えて光の領域、さらにその上まで無限に延びていなければならない……事実上、そんなノイズは絶対に作れない。だって、上限が無いのなら、そのノイズがもつエネルギーは無限大でなければならず、無限大のエネルギーを出せる回路など存在しないからだ。そんなわけで、高価な測定器であるホワイトノイズ・ジェネレータでも、上限周波数を決めたスペックで作られている。でも、上限を決めたところで、1Hzあたりのエネルギーを同じにするのはムチャクチャに大変な作業。ローノイズのアンプ(よけいなノイズが入ってはいけないから)と精密フィルタの山になる。あまり作りたくない機材だ。
 一方ピンクノイズとは、「オクターブあたりの帯域に含まれるエネルギーが同じノイズ」をいう。ご存知のように、オクターブは周波数が2倍になる(あるいは半分になる)関係だから、たとえば50Hz〜100Hzの1オクターブ(帯域は50Hz)と、1000Hz〜2000Hzの1オクターブ(同1kHz)に含まれるエネルギーが同じ、ということ。だから周波数が高くなればなるほど、ホワイトノイズよりもエネルギーは小さくなる(信号レベルでいえば、ホワイトノイズに-6dB/oct.のフィルタをかませるとピンクノイズになる)。つまりピンクノイズはホワイトノイズの高域が落ちた音になり、これが「シャー」と「ザー」の違いの原因。
 純理論的にはピンクノイズも周波数の上限・下限は決まっていない。理論通りの発生器は作れず、ある周波数帯域に限定して作るしかないが、やはり製作はとても困難。信号レベルを指数的に管理する必要(超精密フィルタを使う)があるし、周波数が上がれば上がるほど、低レベルのノイズを確実に出さねばならず、もしかするとホワイトノイズよりも作りにくいかもしれない。
 こういった精密ノイズ・ジェネレータは測定の分野だけで使われる。部屋の音響特性を測る場合などだ。音楽の音源に使われた例は聞いたことがない。もしかするとミュージック・コンクレートの連中がやっているかもしれないが、誰か知ってる?
 教科書や参考書には必ず出ていることだけど、ホワイトとピンクの名前の由来は「光」から来ている。太陽光線はすべての波長(周波数)の成分を均等に含んでいて(のかなぁ?よく知らん)、白い物を白く見せるから「白色光」という。光と音では周波数は全然違うけれど、ホワイトノイズのスペクトルは白色光によく似ている。だから「ホワイト」なのだ、という。また、周波数が高くなるとエネルギーが減るような光線は、当然のことながら低い周波数のエネルギーが大きくなり、光でいえば赤の方が強くなるので「ピンク」なんだそうだ。この音と光のアナロジーを発案した人は得意満面だったろうが、ホワイトはいいとして、ピンクは少し強引な気がする。太陽光を-6dB/oct.のフィルタ(どんな物かわからんが)に通したら、世界はピンクに見えるのだろうか? ピンクのルーズソックスなど気味が悪いなぁ。

■回路構成■

   このマシンは「楽器」であり「音源」だから、いかに精密なノイズを作るか、よりも、いかに簡単に使いやすい音を作るかを優先している。回路図の説明に入る前に、まず全体を見渡しておこう。以下が簡単なブロック図。

NOISE ブロック図

 ノイズを得る方法はいろいろあって、たとえば単なる抵抗に電流を流しただけでもノイズは出てくる。微少レベルなので本機のノイズ源には向いていないが、ときには抵抗のノイズさえ問題になる機材もある(だからローノイズ抵抗があるわけ)。もっとハデにノイズを出す素子としてはツェナダイオードがある。簡易的に定電圧がほしい場合に使うアレだ。これは結構ザーザーいってくれる。だからツェナだけで安定化した電源ラインには必ずノイズが乗っている。憶えておいても損ではない。一部のアナログシンセでは、ツェナをノイズ源に使っていた。
 しかし本機では、もっとお手軽に、トランジスタに逆電圧をかけて石をヒーヒー言わせ、そのノイズを使っている。石には個人差というかバラツキがあり、よく鳴く石と鳴きの悪い石があるため、本当は選別が必要なのだけれど、今回は「作ってダメだったら取り替えましょう」でいってみよう。図の「ノイズ発生」のブロックがそれにあたる。次に出す回路図ではQ1とQ2の部分だ。厳密にいえばノイズ発生はQ1で行ない、その出力インピーダンスが高いためにQ2のバッファを入れている。
 石の出すノイズはそれほど大きくない。そこで1段アンプってやり(回路図のA1)、後の加工をしやすくする。あまり低レベルのまま細工するとS/Nが悪くなる……ことは本機では問題ではない。どっちみちノイズだから。AMPブロックの出力には(ノイズ発生に使った石にもよるが)ホワイトとピンクの中間のようなノイズが出てくる。これをフィルタに通して2種類のノイズを得る。LPF(ローパス・フィルタ)を通してピンクノイズを、HPF(ハイパス・フィルタ)でホワイトノイズを得る。ね、これでもう本機のノイズが音響学的に正しいノイズじゃないことがわかるでしょ? 要は「らしい」音ならいいのだ。
 経験から言って、LPF、HPFのカットオフ周波数を200Hzあたりにすると「らしく」なる。そこで今回は220Hz程度にしてみた。LPFの周波数をもっと下げて20Hzくらいにするとレッドノイズになる(試してみる?)。ここに使うフィルタは抵抗・コンデンサ各1個のパッシヴ。特性は6dB/oct.のゆるやかなもの。それにバッファ兼用のオペアンプを付けて(回路図のA2、A3)、ピンク側にはゲインをもたせ、ホワイトとピンクの聴感上のレベルを合わせている。
 前回は三角波と矩形波を混ぜて音作りをしたが、ノイズは混ぜる必要はない(やってみたければどうぞ)。スイッチでピンクとホワイトを選択する。「COLOR」のSWだ。ザーかシャーのノイズだけ使いたい人は「FILTER」のSWでBPFをバイパスして、「VOL」のヴォリュームで音量調節し、バッファ(回路図ではQ3)から出力を得ればいい。よく効くパラメやVCFのような機材を持っている人はそうした方がいいだろう。と書いて、やっぱりパラメは欲しいと気付いた。次に書くBPFがダメだからではない。作りたくなったからだ。そうだ、SOUND BOXシリーズ第3弾は「パラメ」に決まり!(ただし時期未定)
 本機単体で鳴らす場合にはBPF(バンドパス・フィルタ。回路図のA4)が役に立つ。特定の周波数帯を持ち上げることで、ホワイト/ピンクとも、大きな音色変化が得られる。「FERQ」はその周波数を決めるツマミ。アナログシンセでは、こういった用途のフィルタ(VCF)にはほとんどLPFが使われていた。というのは、VCFにはレゾナンスが付いていたから。フィルタのQを変えられたため、少し上げ気味にすればBPFのような効果になった。本機では、そんな凝った回路は採用できないから、オペアンプ1個で作れるBPFを組み込んでいる。ギターのワウに使われている回路だ。正式には「ブリッジドT型アクティヴBPF」という。前述したように、このBPFはアテ勘で作ったので特性は不明(誰か計算して)。でもホワイトなら「ショー」「シー」「シャー」、ピンクなら「ゾー」「ザー」「ジャー」みたいに大幅に変化し、まずは不足なく使える。
 以上が概略。電源は例によって内蔵006Pか外部電源の自動切り替え。製作記事なので「NOISE」単体で作ったが、前回の「OSC」とまとめて1個のケースに入れても便利だと思う。その方法は製作の項の最後で。

■回路とパーツ■

 同じ性能を得るなら回路はシンプルに、パーツは安価に、でも手抜きはいけない。自分で改造できる人のために、ある程度の拡張性はもたせたい。そして製作記事である以上、再現性(同じに作れば同じに動く)は至上命題。これらの面から、SOUND BOXシリーズは「まあまあ」だと思う。なんで100点ではないかというと、前回のOSCではデューティ変化の箇所に変更が必要かもしれない定数があったし、このNOISEでは、ノイズ発生のトランジスタによって音質が変わる可能性があるからだ。なかなか満点は取れない。満点の機材が作れて満点の原稿が書けたら、即座に隠居して猫を相手にお茶でも飲む。
 さて、全体の構成は前項で書いてしまったので、いきなり回路図をお見せしよう。

NOISE回路図 gif形式回路図ダウンロード
印刷用の回路図。
 少し大きめに
   描いてある。



CANDY6形式回路図ダウンロード
CANDY6形式の
      回路図。
   LHAで圧縮。

 例によって図面のダウンロードは右側のホットイメージを右クリックで。緑色はgif形式、ピンクは私が原図を描いたCANDY6のC6形式をLHAで圧縮したもの。
 Q1がノイズ発生のトランジスタ。コレクタが無接続でエミッタにプラス電圧がかかっている。NPNトランジスタにとって、これは逆電圧になる。本来は流してはいけない電流を無理に流すことでトランジスタが悲鳴(ノイズ)をあげる、と思えばいい。どんな悲鳴をあげるかは石によって違うし、加える電圧によっても変わる。できれば15Vくらいはかけたいところだが、電池動作なので8.4V。これだけ電圧が低いと、石による相違がかなりはっきり出てくる。手持ちのいろんな型番のNPNを試してみたが、まったくノイズを出さない石はなかったものの、音は微妙に違った。型番による違いか、個々の石のバラツキかはわからない。多分両方だろう。というのは、2SC1815では大体同じような音が得られたからだ(もちろん少しずつ違うけど)。このマシンは「楽器」だから、10台作って10通りの音になっても構わない。で、ここには2SC1815を指定しておこう。(ついでながら、2SC945は概してあまり良くなかった)
 Q2は高入力インピーダンスのバッファ。石があげる悲鳴はとても小さくてパワーも微小。Q1の出力は、ほぼエレキギター程度だ。そこでQ2でちょっと力を付けてやる。Q2には小型NPNなら何でも使える。2SC1815でなくても構わない。でもまあ、ノイズ発生用の石が不調だった場合に備えて、スペアの意味で2SC1815を指定しておこう。
 A1のオペアンプ(OSCと同じ、クワッドのLM324)は単純な増幅段。22倍に増幅している。A1の出力は2個のフィルタを通ってピンクとホワイトのノイズになる。ピンクにするためのフィルタが33kと0.022。厳密に言えば、フィルタからA2につなぐ100kも関係してくるのだが、それは無視。エレハモ的方法論でいこう。このフィルタを通ると信号は相当に減衰するため、A2では7.5倍に増幅している。何故7.5倍かは、ホワイトノイズとの聴感上のレベルを合わせたからで、耳で聴いて決めた数値。そして目出度く基板穴の1番にピンクノイズが出てくる。
 前回のOSCと同じ発想で、1番穴から出てくる信号はアースを中心にプラス/マイナスに振れる波形、つまり、ここから線を引き出せば、そのまま外部機器に入力できる。A2の出力に入っている10μは、アースにつながる100kとともに「外部に引き出しても使える信号」を作るためにある。これはA3のホワイトノイズにも言えて、1μと100kがその役目をしている。基板穴の3番からはホワイトノイズを引き出せる。コンデンサの値が違うのは、ピンクノイズの方が低域成分を多く含んでいるからだ。といって、10倍もの値を使うまでもなく、3.3μ程度以上なら問題はない。
 ホワイトノイズの方はというと、A3につながる0.0047と150kがフィルタ。A3は信号を1倍にしているだけで信号レベルの増幅はしていないから、単なるバッファと考えても構わない。んじゃ、A3は要らないじゃないか、と思う人に、簡単な「バッファ」の説明をしておこう。
 Q2もそうだが、バッファとは「信号に力をつけてやるもの」と思えば正解。少し理論的には、電流を増幅している、といえる。コンデンサと抵抗だけのフィルタからは、ごく小さな電流しか取り出せない。無理に電流を取り出せばフィルタとしての働きが狂ってしまったり、信号のレベルが大きくダウンする。で、多少大きな電流を取り出しても耐えられるように「電流増幅回路」を使う。これがバッファだ。さらに難しく説明すると「インピーダンス変換」なんていう話になるので、今回はこれまで。いずれにしても「増幅率=1倍」のアンプだからといって取り去ってはいけない。通常、増幅率は「電圧」(信号レベル)について言う。でも実は、回路を安定に働かせるには充分な出力電流が必要で、設計する際には、そのあたりを重点的に考えなければならない。(つーか、慣れてくると自然に考えちゃうんだな、これが)
 余計なことばかり書いているようだが、どうせ作るなら少しずつ回路各部の働きを理解できるようになった方がいいでしょ? それに、たとえば教室で「今日は電流増幅について説明します」なんてやられても、まったく頭に入らない(少なくとも私は)けれど、製作と同時進行なら切実さが違う。いくら私でも半分くらいはわかる。まあ、要は難しく考えないこと。リクツではなく「お話」として捉えてもらいたい。アナログなんですから。
「COLOR」のSWはピンクとホワイトのセレクト。回路図下段に移って、もしもフィルタ(A4周辺)を使わないなら、47kを通って、最後の音量調整用VRに行く。この47kは、フィルタでいくぶんか信号レベルが落ちるため、「FILTER」SWを切り替えたときの聴感上の音量差を無くすためのもの。100kBのVRとともに、信号レベルを約68%に落としている。
 A4周辺が、ワウの回路でお馴染みのBPF。ちゃんと計算すると面倒な回路だ。おおまかに言えば、持ち上げる周波数を決めるのは2個の0.0022μと150k。さらに1.5kも関係するのだが、ここでは敢えて無視する。作ってみて、もしも周波数帯域が気に入らなければ(大体気に入ると思うが)、まず0.0022を2本同時に増減してみよう。0.0015や0.0027にすると帯域は変わる。(コンデンサを大きくするほど周波数は低くなる) 150kを少し変えても同様に変化する。本当はもっと鋭い特性(Qを大きく)したかったのだが、発振の危険もあるため(発振した音も面白いが)安全圏でやめておいた。「FREQ」の100kBで持ち上げる周波数が変わる。これを回せば、ホワイトなら「波の音」、ピンクなら「嵐の音」になる。
 このブロックの出力、基板穴の9番にも、すぐに外部に引き出せる信号がきている。だから極端な話、基板穴の5に適当な信号を入れ、9から引き出せば、立派なBPFになる。たとえば中波ラジオの同調が外れたような効果を得たいなら、このままソク使える。(なつかしのデキシー・ミッドナイト・ランナーズがアルバムの冒頭で使っていたっけ)
 VOLの100kBは、これまた例によってAカーブまがいの使用法。33kの低いインピーダンスで受けるエフェクタ御用達回路だ。Q3は送り出しバッファ。ハヤリと値段で2SK118としたが、2SK30Aでもまったく同じに使える。
 全体のバイアス電圧は、電池電圧を2本の3.3kで分圧して作っている。バイアス電圧チェック用に、基板に16番の穴をあけておいた。気にならない人は16番は放っておこう。興味のある人は16番に抵抗のリード線の余りでも立てておいて電圧を測ってみよう。4V〜4.5Vになるはずだ。なお、ここからヘンな電流は取り出さないこと。バイアス電圧自体が狂ってしまう。
 このマシンの消費電流は5mA以下。ほとんど前回のOSCと同じで、006Pでも充分にもつ。それでも外部電源対応にしたのは、これまたOSCと同じ理由。外部電源なんか「絶対に要らない」人は、点線内の回路は不要。また、78L09の中央足からアースに落ちているダイオードについては前回参照。(まったく同じ回路だから)

■製作■

 前回にくらべると、配線が楽な代わりに基板が少し大きい。でも全体としては、今回の方が製作は楽。Q1によっぽどヘンな石を使わない限り、まず一発で完動するだろう。念には念を入れたい人は、基板完成時に、基板穴1と3の音を(ラジカセでもいいから)聴いてみよう。そしてQ1の石をいくつか取り替えてみて、一番気に入ったものにしておけば万全。このテストの際には、SWやVRを付ける必要はない。電池だけつなげばいい。オシロを持っている人は、音を聴くのと同時に基板穴1と3の信号を観測。ホワイトとピンクの違いが目で見える。このとき、波形の片側がクリップしているように見えるかもしれないが、そんなのは気にしない。ファズにはならないからご安心を。

★基板の製作

 今回も14ピンのICを使うので、ぴったりのサイズが望ましい。少し大きめにプリントアウトして縮小コピーでサイズを合わせるとうまくいくはず。1インチは25.4ミリだから、基板サイズは約45.7ミリ×73.7ミリになるけれど、カンジンなのは外寸ではなくてピンの間隔。IC部分のピン間隔を2.54ミリにしよう。測り方は簡単で、使用するICソケットを当ててみて、ピンの位置が合えばいい。

プリントパターン gif形式プリントパターン
gif形式の印刷用プリントパターン。
少し大きめに描いてある。



CANDY6形式パターン
CANDY6形式のプリントパターン。
LHAで圧縮。



 ダウンロードは回路図と同じ。この画面から落としてもいいけれど、できれば右側のホットイメージから右クリックの方がベター。少し大きめに描いたgifファイルとLHAで圧縮したCANDY6形式の元図を用意した。CANDYでなら原寸でプリントアウトできる。先日CANDYの販売担当に訊いたら、新しいバージョンの発売は未定だそうで(開発自体やってない感じ)、当分は現在のCANDY6 Ver1.5でいくらしい。このCADは安いわりには何にでも使える。使いこなすと、機能面で使いにくいところも出てくるけれど、値段を考えれば完全に許せる。数十万円のCADに比べても速度は互角。ただデータサイズが150kバイトあたりを超えると、いきなりノロくなる(クロック120MHz、実装RAM 64MBで)。なお、最近発売された姉妹品の3・D PERSのVer3は、やっぱりノロいみたい。3Dになればデータ量が増えるのは理の当然だから、私は憂鬱になって買うのはやめた。
 何の話だっけ。そうだ、基板。作り方や諸注意は前回と同じなので省略。今回も、ピン間パターンなど無いので、手描きが一番だろう。
 次はパーツレイアウト。これもダウンロード用に2種類のファイルを用意した。CANDY6を使える人は、非表示になっているレイヤを「表示」にすると、パーツ面から透視したパターンが見える。

基板パーツレイアウト 基板写真
gif形式基板パーツレイアウト。印刷用
 gif形式のパーツレイアウト。
 印刷用。
CANDY6形式パーツレイアウト
 CANDY6形式パーツレイアウト。
 LHAで圧縮。
 Cはトランジスタ、KはFET、Lは78L09。FETはどっち向きに付けてもいいけれど、トランジスタと78L09の三端子レギュレータは必ずフラットな面を図面と同じ方向にする。324にはソケットを使い、ICの型番の文字を図面と同じ方向にする。電解コンデンサの極性にも注意。ダイオードは本体に帯のある方が、図面では三角の頂点に付いた棒の方向になる。「J」という線はジャンパ線。抵抗の余ったリード線などで、ホッチキスの玉のような形を作り、基板穴どうしをハンダ付けする。要するに抵抗値「0Ω」の抵抗。デジカメを新しくしたので(出費ばかりかさむのだ)カラーバランスは良くなった。写真から抵抗値も読めるでしょ。フロッピ式マビカさまのおかげです(やっぱりSONYは写真屋ではない。このシャッターをブレずに押せる人はいないだろう)。
 Q1にあたるトランジスタは、交換しやすいようにエミッタとベースだけ(つまり両端の足だけ)ハンダ付けし、中央のコレクタにはハンダ付けしないこと。Q1は図と写真で右上にあるトランジスタ。それから、パーツをハンダ付けする前に、穴の番号を細い油性ペンで書き込んでおくと楽かもしれない。
 ここで初心者用、カラーコードの読み方など……。

   抵抗カラーコードの読み方
     1k=茶黒赤、1.5k=茶緑赤、3.3k=橙橙赤、10k=茶黒橙、33k=橙橙橙、47k=黄紫橙、
     100k=茶黒黄、150k=茶緑黄、220k=赤赤黄、750k=紫緑黄、1M=茶黒緑
      (金色の線は精度5%を表わす。どうでもいいので無視する)
   コンデンサの表記
     22pは22と表記。
     0.0022=222、0.0047=472、0.01=103、0.022=223、0.1=104                            と表記されていることもあります。

★ケース加工と配線など パネル正面写真 ジャック類の付け方
 前回よりVRやSWが少ないので、パネル・デザインの自由度はかなりある。でも基板はなるべく下端に取り付けよう。VRとSWの穴位置は、実際にパーツや基板をケースに入れて決める。ジャックは意外と奥行きがあるので注意。それから、電池を納める場所を最初に決めておこう。「できましたッ! おや、電池が入らない……」では泣くに泣けない。
 前回も書いたが、タカチのYMシリーズは底板側に10ミリのエッジがあり、パネルをエッジにビス留めする構造。この10ミリのエッジを考慮しないと基板やパーツがぶつかり、フタの閉まらないマシンになる。出力ジャック、DCジャックとも、ケースの上下センターに付けるとマズい。穴の中央を、ケース下端から18ミリのところにしている。
 タカチのケースにはパネル表面にビニールが貼ってある。表面保護用だが、穴あけ位置はビニールの上に極細のマーカーで線を引いて決める。また、このビニールは穴あけ加工が全部済むまではがさないこと。美しく仕上げるコツだ。
 パネル文字は必ず入れよう。インレタでなくても構わない。自分だけで使うならマーカーで書いてもいいし、シールのようなものを貼ってもいい。インレタを使うなら、IC(社名)かマクソンが使いやすい。レトラセットは最大手だが、ベースのビニールが薄くて最悪。転写すると凹んで、隣の文字が使用不能になる。ICとマクソンの値段は1枚400円くらいだ。もっと安いインレタもある。メーカー不明の各種があり、運が良ければ日曜大工の店や安売り屋で手に入る。1枚100円! 今回もリアパネルの文字やPINK/WHITEなどの文字に使った。うまいのを見つけると100円で4枚も入っていて、黒だけでなく青やピンクの字もある。探してみよう。

ケース内結線図基板 ケース内写真 gif形式結線図。印刷用
gif形式の結線図。


CANDY6形式結線図
CANDY6形式結線図。
LHAで圧縮。
 結線図がヘンに縦長になってしまって申し訳ない。製作する人は右のホットイメージからダウンロードして、少し大きめにプリントアウトしておくことをお薦めする。配線数も少なく、引き回しのスペースも充分にあるので前回よりも格段に楽だ。ただ、今回はシールド線を使っている。★印の1ヶ所では芯線だけの接続になり、ここには熱収縮チューブが不可欠。ま、手抜きして普通のビニール被覆線を使い、アース(2番穴)は無視しても支障はないと思うけど……保証はしない。FILTERのVRに行く線はヨリ合わせ、なるべくケースに這わせる。この他の箇所は、かなり乱雑に作っても、つなぐ場所さえ間違えなければ、まず完動する。
 配線用のビニール被覆線は、少なくとも4色は必要。シールド線は配線用の細いのがベター。これも2色以上あればラクチン。
 基板は3ミリのスペーサでケースから浮かせて固定する。固定してからハンダ付けするのは、魔術でも使わない限り無理だから、固定する前に基板を所定の位置に置き、各穴から配線先までの長さ分の配線材を基板にハンダ付けする。配線が出る穴全部について、この処理はしておく。配線材の長さは余裕をみて決めよう。短く切るのはいつでもできるから。
 このマシンは、出力ジャックにプラグが差さるとオンになるエフェクタ式。パワースイッチを別に付ける改造法は前回を参照。また前述したように、ホワイトノイズとピンクノイズは独立して取り出せるし、BPFの入出力もインサート端子として増設できる。全部わかっている人は「ご自由にどうぞ」だが、初心者諸氏には、まずこの記事通りに作ってみることをお薦めする。まずちゃんと動かして、それから改造を考えても遅くはない。ケースを大きくするにしても、1000円も出せば買えるのだから。
 で、ケースを大きくして、前回作ったOSCと合体する方法。いろんなやり方がある。一番単純なのは(単純でも使いにくいわけではない)1台のケースに、そのまんまOSCとNOISEを組み込む。「まんま」だから電池は2個いるし、外部電源ジャックも2個になる。これはOSCかNOISEのどちらかを単独で使う機会の多い人向き。
 次に電源を共有する方法。外部電源ジャックは1個になり、電池も1個で済む(OSCとNOISEの合計消費電流は10mA程度なので、電池1個でも間に合う)。なお、ここまでやるなら、パワーのオン/オフにはスイッチを使いたいだろうから、2pのスナップスイッチを1個用意しよう。まず、外部電源ジャックのプラス端子から2本の線を出し、両方の基板のしかるべき穴(OSCは19番、NOISEは15番)につなぐ。006Pの電池スナップの赤線は2本に分け(ちゃんとハンダ付けして熱収縮チューブで処理する)、やはりしかるべき穴(OSCの18番とNOISEの14番)にハンダ付けする。これでプラス電源関係は済んだ。
 電池スナップの黒線は外部電源ジャックのマイナス端子にハンダ付けし、そこからもう1本線を出して、用意した2pスナップSW(3pでも代用可)のセンター端子にハンダ付け。SWのもう片方の端子から、OSCかNOISEの出力ジャックのアース端子にハンダ付け。これでおしまい。つまり、プラス側の電源ラインはつなぎっぱなしにして、マイナス側を切ってパワーをオン/オフするわけ。
 この方法だとOSC、NOISEが同時にパワー・オンする。個別にオン/オフはできない。個別にオン/オフしたい人は「マイナス側を切る」がヒントになるだろう。スナップSWは当然2個必要。考えてみよう。
 パワー・オン表示のLEDを付けたい人もいるだろう。これはちょっと面倒。というのは、両方(または片方)の基板パターンから線を引き出さなければならないから。パターンのプラス電源ラインから線を出し、1k〜2kΩの抵抗を通してLEDのアノードにつなぎ、カソードは出力ジャックなどのアース端子につなぐ。それだけのことなんだが、わかる人だけやってみよう。わからなくても挑戦するのは悪いことではない。ただし、LEDを光らせるには数mA以上の電流が要る。マシン本体の消費電流に比べて、かなり大きい。せっかくの省電力設計が無駄になることは覚悟。もっとも外部電源で使うのなら全然心配はない。
 でも、ちょっと待って。SOUND BOXシリーズはこれで終わりではない。次は(次回ではないよ)パラメだ。図体は大きくなるものの、パラメまで合体しても面白いのではないだろうか。

■チェックと音出し■

 改造の件はおしまいにして、NOISE単体に話を戻そう。
 配線が終わったら全体を調べ直して図面と合っていることを確認しよう。電池をつなぎ、出力ジャックに何でもいいからプラグを差して1分ほど様子を見る。ヘンな臭いや煙、火花は出ていないかな? 電池にも触れてみて、発熱していないのを確かめる。ノーマルな消費電流は5mA以下だから、電池は熱くならないはず。
 OUTからアンプにつなぐ。このとき、FILTERのSWはOFF、VOLは絞りきっておく。COLORはどちらでもいい。アンプのボリュームを少し上げて、VOLを上げていこう。ノイズが聞こえれば成功。COLORを切り替えて、ピンクとホワイトの音を聴き比べてみよう。
 次にFILTERのSWをONにする。センター付近にして少し回すと、ノイズにクセが付いているのがわかるだろう。PINKとWHITEを切り替えて「波の音」と「嵐の音」になるのを確認。ここまで正常ならマシンは完動だ。なお、WHITEではFREQツマミの全域できれいに音色変化するが、PINKではツマミを左に回しきったあたりで、もしかすると「ブッ、ブッ」といった感じになるかもしれない。これはBPFで低域が持ち上がりすぎて飽和している音だ。直そうと思っていたが、聴いてみるとなかなかヘンな音であり、試聴した小沢も「ここが一番使える。面白い」との意見だったので、敢えて直していない。面白いと感じる人は、そのまま使ってもらいたい。ヘンすぎると思うなら、ピンクノイズのときにFREQツマミを絞り切らなければいい。
 このとき小沢は前回のOSCもついでに試聴し、「発振周波数をもっと低域寄りにしたい」と言っていた。理由は「オレはベーシストだから」だそうで、あまり一般的な評価ではないが、世の中いろんな人がいるので、ここでOSCの簡単な改造法も書いておこう。
 OSCの発振周波数は前号回路図でいう「A2」の帰還回路に入っているコンデンサ(定数では0.001。基板上に1個しかないからすぐわかる)で決まる。これを大きくすれば発振周波数は下がり、小さくすれば上がる。小沢は0.0022にして、発振周波数全体を1オクターブ下げる予定だという。「ベーシスト」ではないけれど低域(または高域)がもっと欲しい人は、コンデンサを付け替えるもよし、SWを増設してコンデンサを切り替えるようにしても楽しいだろう。ただ0.001よりも小さい容量のマイラは少ないので、特にマイラにすることもない。セラミックで充分(測定器ではないからね)。680pなどお薦め。それ以上小さくしても、324という石は「低速」なので、高域をうまく発振できるかどうかわからない。逆に、小沢風に低域を出すならいくらでもOK。0.0047あたりまでは使えるだろう。これだと最低音で、人間の可聴範囲以下の音程になる。

★(音響機器購入のための)簡易測定器としての利用法

 ノイズはいろんな周波数を含んでいるだけに、それを鳴らす機器のキャラクタがはっきりわかる。試しに、ラジカセ、楽器アンプ、高級コンポなどで鳴らし比べてみよう。同じノイズが全然違った音に聴こえても不思議はない。これを利用する。
 まず、あなたが一番愛用しているカセットデッキ(MOでもDATでも)に(BPFはオフで)ホワイトノイズを録音し、再生音をよく聴く。これから買う機器がヘッドフォンステレオならヘッドフォンで、コンポ類ならスピーカで聴く。しばらく聴いていればその音を憶えられる。
 録音したテープ等を持って店に行こう。そして、買いたい機器で再生してみる。憶えていた音と同じなら、あなたの現用機材とあまり変わらない音質だとわかる。違っていたら、その違いによってローが出ているのか、ハイが強いのか、大体の見当は付く。ただしこのテストは、なるべく短時間の第一印象が決め手。あまり長い時間ノイズを聴いていると、憶えていた音がアヤフヤになる。
 新しい機材を買う場合、これまでと同じ音質である必要はないけれど、キャラクタがわからないのは不安だ。ノイズは音楽よりも良いリファレンスになる。
 アマチュアPAの現場でもノイズは使える。とんでもないホール(実は教室)でオペレートする場合、まずノイズを出してみる。ホール内を歩き回って、聴こえ方がどう変化するか調べよう。残響特性はわからないけれど、音楽に影響するほどの定在波が立っていればすぐにわかる。
 とまあ、「楽器」として作ったマシンでも、いろんな使い方ができる。とりあえず1台作っても損はしない。

 さて、今後の予定。順番は決めていないけれど製作が決まっているものは、携帯型ファンタム電源付きマイクヘッドアンプ(バランス入力、バランス・アンバラ両出力)、このページで作っている機材のための外部電源(AC100Vからきれいな直流を得る)、SOUND BOXシリーズ第3弾のパラメEQ(2系統内蔵で直列使用可。発振までQを上げられる)、ハンドメイド・プロジェクトVer.2でも作った某社ファズ(ゲルマ石使用で1.5V動作)、ここまでが製作決定している。考慮中なのは、ADSR付きVCA(楽器音のエンヴェロープを強制的にプリセット)、極端なトレモロ(音がブッタ切りになる。小沢のリクエスト)、良質のヘッドフォン・アンプ(ウォークマンの音が良いわけないでしょ)。さらに次の3機種はリメイクまたは改造版でやはり考慮中。名前からオリジナルを推測してみて……ドクター10(DOCTOR 9の動作安定化版)、ビッグマフラー、イエローフィンガー、etc.etc.。これらを、作りたい順に、出来たものから発表するつもり。どうぞよろしく!


■主要パーツリスト■

★基板上
  半導体関連
   IC:324(メーカー不問) *1
   ICソケット:14ピン用 *1
   FET:2SK188(or 2SK30A) *1
   トランジスタ:2SC1815 etc. *2
   ダイオード:1S1588 etc. *2
   三端子レギュレータ:78L09(メーカー不問、無ければ78L08+LED) *1
  抵抗(1/4W型5%カーボン)
 1k*1, 1.5k*1, 3.3k*5, 10k*1, 33k*2, 47k*1,
 100k*10, 150k*3, 220k*1, 750k*1, 1M*3
  VR(18φ) 100kB *2
  コンデンサ
 セラミック:22p*1, 0.01*1
 マイラ:0.0022*2, 0.0047*1, 0.022*1, 0.1*1
 電解(耐圧16V以上):1μ*5, 10μ*5, 33μ*1
  (耐圧25V以上):10μ*1
★基板外
  ケース:タカチYM-130 *1
  ジャック:ステレオSW無し(orステレオSW付き) *1
  SW 小型トグル3P *2
  DCジャック *1
  006P用スナップ *1
  ツマミ(15φ以下) *2
  スペーサ 3φ用3ミリ *2
  ビス・ナット 3φ10 *2組
   以上の他、配線材が必要です。


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